「T指数(7日間移動平均)が前年比マイナスに」
(更新日: 2016年8月18日 )
図1 T 指数の推移
出所:株式会社ナウキャスト
T 指数の前年比上昇率の低下は止まらず、2015年4月9日以来のマイナスに
本日公表された日経CPI Now T指数の8 月16 日時点における前年比(7日間移動平均値)は▲0.01%となり、低下傾向が続いていたT 指数がついにマイナス圏内に入った(図1)。先日公表されたGDP 速報における消費の動向は予想に反して堅調であったが、品目別の非耐久財においては低迷が続いており、スーパー等では価格の値下げによって売上増加を図る傾向が続いているとみられる。T 指数前年比(7日間移動平均)がマイナスになるのは2015年4月9日以来。
今年に入って、T指数は、4月に入ってからの前年比1%割れと7月のゼロ近傍への低下という2つの節目があった*1。4月の1%割れは、牛乳やヨーグルトなどの乳製品を中心として、昨年、価格を引き上げた品目が今年は価格据え置きとなり、前年比押し上げ効果が剥落したことが主因であった。7月には、インスタントコーヒーにおける前年比押し上げ効果の剥落に加え、食パン・菓子パン、鶏卵といった品目において寄与度の低下がみられた。それぞれ、輸入小麦の政府売渡価格低下による小麦粉の価格低下、供給拡大による価格低下が生じていた。今回日経CPINow、物価上昇率がマイナス圏内へと低下した要因としては、総菜・弁当、ビール、乾めん、麦茶飲料、といった品目における価格の低下が挙げられる。タイムセールの行いやすい総菜・弁当や夏に関連して、そうめんなどの食材や飲み物の価格を引き下げることで売り上げの増加を図っている可能性がある。
*1「足元の物価動向について」日経CPINowマンスリーリポート2016年4月号、「T 指数は前年比でゼロ近傍まで低下」日経CPINowマンスリーリポート臨時増刊号2016年7月12日2
地域別には、九州、四国、関東、東海の地域で前年比の低下が顕著
T指数前年比を地域別にみると(図2)、九州、四国、関東、東海の地域で前年比の低下が最近、顕著である。また、北海道地域では足元プラスに浮上しているものの全国に先駆けて今年5 月以降前年比がマイナス圏内にあった。
図2 地域別T指数の推移
注:7日間移動平均値
出所:株式会社ナウキャスト
足もと進行している為替円高は、企業収益の低下と輸入価格の低下という2つの経路から物価にマイナスの影響を及ぼす。また、非耐久財の消費の回復が遅れれば、更なる物価の低下は避けられない。物価の軟調は今後も続く可能性が高い。
株式会社ナウキャスト
今井聡、舘祐太、林祐輔、余野京登
監修:渡辺努