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「通常価格の改定頻度 」

(更新日: 2016年1月20日 )

 T指数の変化は通常価格の変化に起因する部分と、特売の頻度や値引き幅の変化に起因する部分とに分けることができる。その分離を行う手法がモード指数である。ある店のある商品について、ある一定の期間に最も頻繁に登場した価格が何かを調べる。これがモード価格であり、通常価格と近いと考えることができる。このモード価格を商品間・店舗間で集計したものがモード指数である。具体的には、ある店舗で販売されているある商品について、ある日(t)を中心として前後T日間(つまり、t-T日からt+T日までの期間)で最も頻繁に登場した価格がモード価格である。現状、Tは28日に設定している。
 T指数の前年比変化率とモード指数の前年比の間には次の関係が成立している。

「T指数の前年比」=「mode指数の前年比」+「その他」

ここで「その他」には特売要因(特売になっている商品の割合の変化や特売値引き率の変化)や消費税の処理などに伴う端数調整の影響が含まれる。さらに、T指数の前年比は次のように分解することもできる。

「T指数の前年比」=
「モード価格の改定頻度(上昇)」×「モード価格の改定幅(上昇)」
+「モード価格の改定頻度(下落)」×「モード価格の改定幅(下落)」
+「その他」

ここで「モード価格の改定頻度(上昇)」はモード価格が前年比上昇している商品の割合であり、「モード価格の改定幅(上昇)」は各商品の上昇幅の平均値である。商品の割合を頻度とよぶのはやや抵抗があるがここでは慣例に従ってそうよぶことにする。同様に、「モード価格の改定頻度(下落)」は下落商品の割合、「モード価格の改定幅(下落)」は下落幅の平均値である。なお、消費税率改定の際には、価格の端数処理により1円の差が生まれてしまうことがあり、それをモード価格の変化と誤認する可能性がある。それを回避するために、モード価格の上昇・下落は2円を超えるもののみとしている。

モード価格の改定頻度(上昇・下落)の推移

出所:日経CPINow

 図では2013年1月から直近までのモード価格の改定頻度を示している。下落方向の改定頻度をみると、2014年4月の消費税率引き上げに伴い約30%まで上昇したことがわかる。税率改定に伴う端数処理の過程でキリの良い数字への切り下げ(ただし、小幅な切り下げ)が起きたことを示している。下落方向の改定頻度は、消費税率引き上げの影響が消えた2015年4月以降は20%程度の水準に戻っており、端数処理に伴う小幅切り下げが一巡したことを示している。一方、上昇方向の改定頻度をみると、2014年4月の消費税引き上げ時に20%を超える水準にジャンプし、その後も上昇基調にある。モード価格の計算は税抜きベースの価格データを用いて行っているので、ここで見ているのは増税の影響ではない。消費税率改定直後に企業の価格設定が強気になり、それが続いていることを示している。ただし、足元については、昨年秋以降、上昇方向の改定頻度が横這いまたはわずかな低下となっており、基調に変化がうかがえる。ここはT指数の前年比プラスが今後も続くかどうかを判断する上で重要なポイントであり、注意深く見ていく必要がある。

今井聡
株式会社ナウキャストチーフアナリスト